SRE NEXT 2026 Call for Proposal

はじめに

こんにちは、SRE の多田です。
今回は SRE NEXT 2026 の Call for Proposal についてお話しします。

私たち SRE としては SRE NEXT へ参加したことはなかったのですが、博報堂テクノロジーズで SRE として約 3 年取り組んできた中で得られたものをアウトプットできればと、CfP(Call for Proposal) の提出を目指すこととしました。

結論からお話しすると、残念ながら CfP は不採択となりました。
この記事では CfP 提出までにどのように準備したのかの紹介、そして不採択となった CfP の供養をさせていただきます。

ことの始まり

もともと SRE NEXT のイベントは知っており、2025 年末くらいに私と SRE 部の部長と二人で雑談をしている中で、SRE NEXT 2026 で CfP の提出をしてみようとなりました。

SRE NEXT 2026 の CfP は以下のブログでもあるように 2/26(木) 〜 3/25(水) の応募期間となっていました。

CfP の執筆

実際に CfP に取り掛かり始めたのは上記ブログが公開された 2 月初旬からでした。
CfP の応募期間(=期限)が分かっている状態だったので、まずは CfP 完成までの簡易なスケジュールの作成、そして Inclusive SRE という SRE NEXT のテーマを意識しつつ、私たちが培ってきた経験の中で何を私たちの発表のテーマとするのかから取り組み始めました。

そのためにまずは、私たちがこの 3 年間でどのようなことをしてきたのかを書き出しました。
それを時系列にして SRE チーム年表なるものも作ってみましたが、途中で JOIN したメンバーとしては知らない過去話が聞けたり、過去話に花が咲いたりして非常に面白いのでおすすめです。

洗い出したものからある程度テーマを絞り、発表の趣旨、ターゲットを具体化していきました。
次にそれらをもとにストーリーの骨格づくり、つまり章立てを構築していきました。
テーマ、ターゲット、章立てまで組めればおおよそどのような発表をしたいかが固まってくると思います。

そして章立てをさらに深掘りしていきます。
それぞれの章で具体的にどのような話をするのかイメージを膨らませていきます。
ここでは私と部長だけでなく他の SRE メンバーからも、当時の状況や考えなどをヒアリングすることで解像度の高いものへとしていきました。

ここまで進めたところで、CfP の記載項目(発表のタイトル、発表の概要、聞いた人が得られるもの、発表の詳細)の材料はおおかた揃った形になります。
ここで記載に進んでもいいのですが、ちょうど良いタイミングで「SRE NEXT 2026のプロポーザルを書く会」が開催されておりました。

SRE NEXT のコアスタッフや CfP のレビューに携わっている方もいらっしゃり、CfP を書く上でのポイントを聞けたり、実際に相談などもできます。
こちら参加させていただき、ポイントを学ばせていただいたり、検討中の内容を相談させていただきました。
発表で使われた資料は公開されていますが、やはり実際に中の人と直接お話をして相談したり意見を聞けたりするのは非常に有意義かと思います。

そして、上記を踏まえつつ CfP に落とし込んでいきました。
概要 1,000 文字、詳細 3,000 文字と数字だけ聞くと余裕があるように感じますが、記載してみると意外とタイトに感じるかもしれません。
なんなら私たちは最初は余裕でオーバーしてしまったくらいです。
まずは文字数を気にせずそれぞれの項目を書き起こす。
そこから内容や表現をブラッシュアップしていきながら文字数制限内に収まるように調整していきます。

なんども書いては読み合わせをして、微調整や修正を行いながら〆切ぎりぎりまで執筆していました。
一度提出はしていましたが、最終版を提出したのは〆切の 30 分前くらいだったかと思います。
もっと前にある程度の形にはなっていましたが、初めての CfP 提出ということもあり細かい表現まで気にかけていたらぎりぎりになりました。

次回に向けて

今回 CfP に採用されませんでしたが、実際に採用されたテーマが発表されたらそちらと比較しながら分析してみたいと思います。

これからの一年で SRE としての成熟度も磨きつつ、CfP の解像度も上げた上で改めて来年 CfP の提出に挑戦したいと考えています。
また、今回の CfP の内容を以下に記載することで供養させていただきます。

CfP の供養

発表のタイトル / Title

SRE文化を成熟させるコミュニケーション

発表の概要 / Abstract

SRE文化の提唱や浸透、成熟にはプロダクトチームとのコミュニケーションが鍵です。
信頼性に対する取り組みには課題や目的があり、それをSREだけでなくプロダクトに関わるメンバーと共通認識として持つ必要があるからです。
本セッションでは、SRE文化を根づかせてきた過程で、どのようなコミュニケーションが良い結果を生んだのかを事例とともに紹介します。

私たちのSREはDevOpsを軸とした組織から始まりました。
Reliabilityへの方針転換にあたり、プロダクトチームとの信頼関係を重視しProduct SREのパターンを選択しました。
この体制のもと、SRE文化の成熟度に応じてコミュニケーションのアプローチが変化していった3つの事例を取り上げます。

  • 導入期:事業責任者との合意形成 – SREが主導する
    SREに対する認知がない段階では、プロダクトへの参画自体に抵抗が生まれる可能性もあるため、事業責任者との合意形成を足がかりにし、SREが主導して取り組みを進めます。文化理解が浅い段階ではSLOの活用が定着しづらい現実も含めてお話しします。
  • 浸透期:PdMとの合意形成 – SREがプロダクトチームと伴走する
    複数プロダクトでの活動を通じてSREに対する認知が広がり始めた段階では、PdMとの合意形成から進めることができます。この前提があることで目的の共通認識をより深く形成でき、SREが伴走することでプロダクトチームがSLOの運用を主体的に回し始めた事例をお話しします。
  • 定着期:プロダクトチームとの合意形成 – プロダクトチームをEnablingする
    SRE文化が定着した段階では、プロダクト側からSLO策定の要望が上がるようになり、プロダクトチームと直接合意形成して進めることができます。チームの意欲と理解が伴うことでSREはEnablingも進めることができ、策定から運用までプロダクトチームが自走できるようになった事例をお話しします。

さらに、個々のプロダクトで築いたコミュニケーションを土台に、インシデント対応のベースルールの統一や、ポストモーテムのオープン化、SRE事例の共有と横断共有会を通じて、SREがプロダクトチーム横断のHubとなり、組織全体の文化醸成につなげた横断的な取り組みも紹介します。

聞いた人が得られるもの / Audience Takeaways

SRE組織の立ち上げから、SRE文化の提唱や浸透、成熟に至る過程を事例を通じて理解できます。
現在のSRE文化の成熟度によってどのようなコミュニケーションが効果的なのか、そして文化を浸透させていくためにはどうすれば良いのか、そのノウハウを持ち帰れます。

発表の詳細 / Session Details

  1. イントロダクション(3分)
    1. 自己紹介
    2. テーマの提示
  2. SRE組織の立ち上げ – DevOpsからReliabilityへ(5分)
    ここではDevOpsからReliabilityへ組織の方針転換を行い、Product SREのパターンを選択した経緯と背景をお話しします。
    この組織設計がテーマにも掲げているコミュニケーションアプローチの前提となっています。
    1. 前身組織
      前身組織は一般的なCI/CDやクラウドインフラ管理などに加えて、共通フレームワークの開発や運用、プロダクト開発への参加、社内DX、新卒教育まで行うユーティリティチームであった。
    2. DevOpsからReliability
      組織改編や拡大とともにプロダクトのユーザー利用数の増大も見込まれており、一定以上の信頼性の担保が求められる背景からReliabilityへ方針転換をした。
    3. SRE組織パターン
      組織改変直後でプロダクトチームとの接点が少なく信頼関係構築のためにコミュニケーションを重視していたことからProduct SREのパターンを選択した。
      この組織パターンを選択したことで横断的な取り組みが現場まで届きやすくなった効果を得られた。
  3. プロダクトへのSRE導入・推進(14分)
    SRE文化の成熟度に応じてコミュニケーションのアプローチが変化していった3つの事例を紹介します。
    1. 導入期:事業責任者との合意形成 – SREが主導する
      • 背景:SRE文化が浸透していない段階で、SREとして初めて関わったプロダクト。
      • アプローチ:プロダクトチームにはSREに対する認知がなく、参画自体にハードルがあったため、事業責任者との合意形成を足がかりにプロダクトへ参画した。参画後はIaCなどプロダクトチームに直接価値のある取り組みから着手し、信頼関係を構築した上でSREの取り組みを進めた。
      • 結果:CUJが定義されSLOが策定された。
      • 学び:導入期では同じ取り組みをしたとしても活用までには時間がかかる。しかし、この段階でのコミュニケーションや結果がSRE文化を育んでいき、次の取り組みの足掛かりとなる。
    2. 浸透期:PdMとの合意形成 – SREがプロダクトチームと伴走する
      • 背景:導入期での複数プロダクトでの活動を通じて、SREに対する認知が組織内で広がり始めた段階で関わったプロダクト。
      • アプローチ:組織内でSREに対する認知や信頼も広がり始めており、PdMとの合意形成から進められる土台が形成されている。文化理解が進んでいることでSREがプロダクトチームと伴走する形をとれた。
      • 結果:エラーバジェットポリシーに則りSLOを活用するようになった。
      • 学び:文化理解が進むことで参画ハードルが下がり、SREの取り組みの意義が共有にとどまらず共感にシフトしていくことで、取り組み結果が自然に活用、自走に向かっていく。
    3. 定着期:プロダクトチームとの合意形成 – プロダクトチームをEnablingする
      • 背景:SRE文化が定着し、プロダクト側からSLO策定の要望が上がるようになった段階で関わったプロダクト。
      • アプローチ:プロダクトチーム自身に意欲と理解があるため、プロダクトチームと直接合意形成を進められる。プロダクトチームのモチベーションにより、SREはプロダクトチームのEnablingを見据えて進めた。
      • 結果:SLOの策定から運用までプロダクトチームが自走できるようになった。
      • 学び:文化が定着しチームに意欲と理解が伴うことで、SREはEnablingも進めることができ、同じ取り組みでも成果の質が変わる。
  4. 横断的な取り組み(5分)
    個々のプロダクトで築いたコミュニケーションを土台に、SREがHubとなり、仕組みの統一からナレッジ共有、文化の醸成へと段階的に広げていった横断的な4つの取り組みを紹介します。
    1. インシデント対応のベースルール統一 – 横断の下地を作る
      • 背景と課題:プロダクトごとにルールが異なり、チーム移動時の学習コストが高かった。また、ルールが統一されていないことが横断施策を進める障壁になっていた。
      • アプローチ:インシデント対応のベースルールを制定しプロダクト横断で導入した。
      • 結果と学び:チームを移動しても同じフローで対応でき学習コストが下がる。ベースルールが統一されたことでSlack WorkflowやAI活用など横断的な仕組みを導入しやすい下地が出来上がった。
    2. ポストモーテムのオープン化 – 横断でナレッジを蓄積する
      • 背景と課題:プロダクトごとにナレッジが閉じており、同系統の障害や対応の調査を個々で行っている状態であった。
      • アプローチ:ポストモーテムを横断で管理し、誰でも参加できる体制に変更した。
      • 結果と学び:ポストモーテムを横断で管理、開催することで、ナレッジが組織で蓄積され、ポストモーテム自体も第三者目線の意見が含まれるようになり、より有意義なものになった。
    3. SRE取り組み事例の記録と共有 – SRE文化を浸透させる
      • 背景と課題:SREの考え方や取り組みの背景がSRE内に閉じており、プロダクト側から見るとSREが何をしているのか分かりづらく、取り組みの価値が伝わっていなかった。
      • アプローチ:SREの取り組みを、何を・なぜ・どのように実施し、どうなったかを軸に資料化した。
      • 結果と学び:SREの取り組みの目的や実績が明文化されることで、SREの活動が「信頼性に対する活動」という漠然としたものではなく「プロダクトの価値に貢献する活動」として認識されるようになった。
    4. 横断共有会の開催 – SREをHubにプロダクトチームをつなぐ
      • 背景と課題:プロダクトチーム間で交流する機会が少なく、同じような課題を個別に解決している状態だった。
      • アプローチ:各プロダクトの主要メンバーとSREメンバーを含めた横断共有会を定期開催し情報共有の場とした。
      • 結果と学び:プロダクトが抱える課題やアイデアが共有され、ディスカッションされることでチーム間の交流が生まれた。SREがチーム横断のHubとなることでSREへの信頼やSRE文化の醸成にもつながった。Product SREとして各プロダクトに入っているからこそ現場のナレッジを集約でき、Hubの役割を果たせる。
  5. まとめ(3分)